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2022.10.01漁業分野で特定技能外国人を雇用するための要件・方法・注意点について
目次
1.特定技能「漁業」創設背景
2.農業分野の現状
3.特定技能「漁業」の制度概要
4.特定技能「漁業」の資格取得の要件
5.特定技能「漁業」の受け入れの現状
6.特定技能「漁業」の受け入れの要件
・特定技能所属機関(受入れ企業)
・雇用形態
・業務内容
・報酬
・外国人支援計画・支援項目
・特定技能協議会
7.まとめ
1.特定技能「漁業」の創設背景
・特定技能とは、人手不足が深刻化してきている産業分野において、一定の専門性・技能を有し、
即戦力となる外国人を受け入れるために、2019年4月に創設された在留資格です。
現在のところ、12の産業分野で特定技能の在留ビザが認められており、「漁業」もその一つです。
・特定技能は1号と2号の2種類がありますが、現在のところ「漁業」は特定技能1号のみです。
・漁業分野では、2019年から向こう5年間で2万人程度の人手不足が見込まれていますが、
年1%程度の労働効率化(5年で4,000人程度)の労働効率化及び追加的な国内人材の確保
(5年間で7,000人程度)を行っても、なお不足すると見込まれる9,000人を上限として、
特定技能外国人を受け入れることになっています。
2.漁業分野の現状
・農林水産省の漁業労働力に関する統計(※1)によると、日本の漁業就業者数は
2013年:18.1万人でしたが、2020年:13.6万人にまで減少しており、7年間で約4.5万人も減少しています。
※1:農林水産省ホームページ「漁業労働力に関する統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html
・また、農林水産省「農林水産省における雇用対策の取組」(※2)によると、2019年の漁業分野の有効求人倍率は、漁船員 3.56倍、水産養殖作業員 2.53倍
となっており、全産業平均 1.41倍と比較すると、高い水準となっている。
※2:農林水産省「農林水産省における雇用対策の取組」
https://www5.cao.go.jp/keizai1/koyoukaigou/20200616/20200616siryo4.pdf
3.特定技能「漁業」の制度概要
・特定技能「漁業」の制度の目的は、農業分野における深刻化する人手不足に
対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度です。
・特定技能「農業」では、給与は同職種に従事する日本人と同等以上であり、
通算5年(在留期間中の帰国可)まで日本で就労可能です。
・農業分野の特定技能1号外国人が従事できる業務は、主として、下記①又は➁です。
➀ 漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、
漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)
➁ 養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の
収穫・処理、安全衛生の確保等)
※また、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えない。
(専ら関連業務のみに従事することは認められない。)
関連業務に当たり得るものとして、例えば、次のものが想定されます。
(漁業の業務に従事している場合)
・漁具・漁労機械の点検・換装
・船体の補修・清掃
・漁倉、漁具保管庫、番屋の清掃
・漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込み・積込み
・出漁に係る炊事・賄い
・採捕した水産動植物の生簀における畜養その他付随的な養殖
・自家生産物の運搬・陳列・販売
・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する
農業技能測定試験について |
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実施主体 |
一般社団法人大日本水産会 |
試験言語 |
試験実施国の現地語及び日本語 |
実施方法 |
学科試験及び実技試験ともにコンピューター・ベースト・ テスティング(CBT)方式 |
試験水準 |
➀漁業 学科試験:漁業全般及び安全衛生に係る知識及び業務上必要と なる日本語能力を測定する。なお、試験は原則と して真偽式とする。 実技試験:図やイラスト等から漁具・漁労設備の適切な取扱い や漁獲物の選別に係る技能を判断する試験により 業務上必要となる実務能力を測定する。なお、試験 は原則として多肢選択式とする。 ➁養殖業 学科試験:養殖業全般及び安全衛生に係る知識及び業務上 必要となる日本語能力を測定する。なお、試験は 原則として真偽式とする。 実技試験:図やイラスト等から養殖水産動植物の育成管理や 養殖生産物の適切な取扱いに係る技能を判断する 試験により業務上必要となる実務能力を測定する。 なお、試験は原則として多肢選択式とする。 |
試験時間 |
➀漁業 学科試験:50分、実技試験:20分 ➁養殖業 学科試験:50分、実技試験:20分 |
試験問題数 |
➀漁業 学科試験:30問、実技試験:25問 ➁養殖業 学科試験:40問、実技試験:10問 |
試験科目 |
➀漁業 学科試験 ・漁業一般 ・漁業安全 ・漁業専門(釣り関係) ・漁業専門(網関係) 実技試験 ・同上
➁養殖業 学科試験 ・養殖業一般 ・養殖業安全 ・養殖業専門(給餌養殖) ・養殖業専門(無給餌養殖) 実技試験 ・同上 |
受験料 |
日本:8,000円 海外:一般社団法人大日本水産会ホームページ (https://suisankai.or.jp/skill/)をご確認ください。 |
製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売
・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
・社内外における研修 等
(養殖業の業務に従事している場合)
・漁具・漁労機械の点検・換装
・船体の補修・清掃
・漁倉、漁具保管庫、番屋の清掃
・漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込み・積込み
・養殖用の機械・設備、器工具の清掃・消毒・管理・保守
・鳥獣に対する駆除、追払、防護ネット・テグス張り等の養殖場における食害防止
・養殖水産物動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕その他付随的な漁業
・自家生産物の運搬・陳列・販売
・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び
当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売
・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
・社内外における研修 等
・技能実習制度と比較すると、特定技能1号「農業」は、在留期間中の帰国も可能であり、
従事可能な業務の範囲も広く、派遣での雇用も可能であることから、技能実習より
外国人を受け入れやすい制度です。
4.特定技能「漁業」の資格取得の要件
・特定技能「漁業」の資格取得には、以下の2つの方法があります。
(1) 技能測定試験と日本語能力試験に合格
➀ 農業技能測定試験
ア 「漁業技能測定試験(漁業)」
イ 「漁業技能測定試験(養殖業)」
(出典)一般社団法人大日本水産会ホームページ「在留資格「特定技能」漁業技能測定試験について」
https://suisankai.or.jp/skill/
➁ 日本語能力試験
「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」
日本語能力試験について |
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国際交流基金日本語基礎テスト |
日本語能力試験(N4以上) |
実施主体 |
国際交流基金 |
日本国際教育支援協会、 国際交流基金 |
問題数・ 試験時間・試験科目 |
約50問/60分間 文字と語彙(約12問) 会話と表現(約12問) 聴解(約12問) 読解(約12問) |
【N1】 言語知識(文字・語彙・文法)・読解:110分(目安:71問) 聴解:60分(目安:37問) 【N2】 言語知識(文字・語彙・文法)・読解:110分(目安:75問) 聴解:60分(目安:32問) 【N3】 言語知識(文字・語彙):30分(目安:35問) 言語知識(文法):70分 (目安:39問) 聴解:40分(目安:28問) 【N4】 言語知識(文字・語彙):25分(目安:28問) 言語知識(文法):55分 (目安:29問) 聴解:35分(目安:28問) |
試験言語 |
英語、中国語、インドネシア語、 クメール語、モンゴル語、ミャンマー語、ネパール語、タイ語、ベトナム語、ウズベク語 |
日本語 |
実施方法 |
コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式 |
マークシート方式 |
受験料 |
日本:7,000円 海外:国により異なるため、プロメトリック社Webサイト (http://ac.prometric-jp.com/testlist/jfe/index.html) よりご確認ください。 |
日本:6,500円 海外:日本語能力試験JLPTホームページ https://www.jlpt.jp/application/overseas_list.html より各国の実施期間へお問合せください。 |
試験日程 |
国際交流基金ホームページのJFT-Basic2022年度テストスケジュール https://www.jpf.go.jp/jft-basic/schedule/pdf/test_schedule_2022.pdf よりご確認ください。 |
【日本】 2022年7月3日(日) 2022年12月4日(日)
【海外】 日本語能力試験JLPTホームページ https://www.jlpt.jp/application/overseas_list.html よりご確認ください。 |
(出典)国際交流基金 日本語基礎テストJFT Basic ホームページ
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/
国際交流基金・日本国際教育支援協会 日本語能力試験JLPT ホームページ
https://www.jlpt.jp/index.html
(2)漁業分野の「技能実習2号」を修了
・下記の「技能実習2号」を修了した方は、漁業技能測定試験と日本語能力試験の受験が免除され、
受験せずに特定技能1号「漁業」へ移行可能です。
➀ 漁業
・漁船漁業職種8作業(かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、
刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業)
➁ 養殖業
・養殖業職種1作業(ほたてがい・まがき養殖作業)
5.特定技能「漁業」の受入れの現状
・漁業分野においては、2019年から2024年までの5年間に9,000人を上限として
特定技能外国人を受け入れることになっています。
・しかし、新型コロナウィルス等感染症対策に伴う入国制限の影響もあり、
2022年3月末時点での漁業分野における特定技能外国人数は718人となっており、
上限9,000人を大きく下回っています。
6.特定技能「漁業」の受入れの要件
【特定技能所属機関(受入れ企業)】
(直接雇用形態)
➀労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
➁1年以内に特定技能外国人材と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
③1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により、外国人の行方不明者を発生させていないこと
④欠格自由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
⑤特定技能外国人材の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
⑥特定技能外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結
していないこと
⑦受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
⑧支援に要する費用を直接又は間接に特定技能外国人材に負担させないこと
⑨労働者派遣の場合は、派遣先が➀~④の基準に適合すること
⑩労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
⑪雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
⑫報酬を預貯金口座へ振込等により支払うこと
(直接雇用形態)
・厚生労働大臣の許可を受けた労働者派遣事業者(国土交通大臣の許可を受けた船員派遣事業者を含む)であり、
かつ地方公共団体又は漁業協同組合、漁業生産組合若しくは漁業協同組合連合会、その他漁業に関連する業務を
行っている者が関与するものに限られる。
【業務内容】
➀ 漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、
安全衛生の確保など)
➁ 養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収穫・処理、
安全衛生の確保など)
※また、漁業又は養殖業に従事する日本人が通常従事こととなる関連業務であれば、付随的に従事することが可能。
(漁業の場合の関連業務)
・漁具・漁労機械の点検・換装
・船体の補修・清掃
・漁倉、漁具保管庫、番屋の清掃
・漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込み・積込み
・出漁に係る炊事・賄い
・採捕した水産動植物の生簀における畜養その他付随的な養殖
・自家生産物の運搬・陳列・販売
・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造物・
加工物の運搬・陳列・販売
・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
・社内外における研修 等
(養殖業の場合の関連業務)
・漁具・漁労機械の点検・換装
・船体の補修・清掃
・漁倉、漁具保管庫、番屋の清掃
・漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込み・積込み
・養殖用の機械・設備、器工具の清掃・消毒・管理・保守
・鳥獣に対する駆除、追払、防護ネット・テグス張り等の養殖場における食害防止
・養殖水産物動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕その他付随的な漁業
・自家生産物の運搬・陳列・販売
・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する
製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売
・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
・社内外における研修 等
【報酬】
・日本人と同等額以上。
【期間】
・特定技能制度では、下記①~➁のどちらも可能です。
➀5年間継続して雇用
➁繁忙期のみ、通算5年間雇用
【支援項目】
・農業者が外国人材を雇用する場合、主に下記①~⑩の支援内容について、具体的に
どのように行うかを定めた「支援計画」を事前に作成する必要があります。
尚、外国人材への支援は、農業者自身が行うか、「登録支援機関」に委託することができます。
<支援計画の概要>
➀ 事前ガイダンス
➁ 出入国する際の送迎
③ 住居確保・生活に必要な契約支援
④ 生活オリエンテーション
⑤ 公的手続き等への同行
⑥ 日本語学習の機会の提供
⑦ 相談・苦情への対応
⑧ 日本人との交流促進
⑨ 転職支援(※受入れ側都合の場合)
⑩ 定期的な面談・行政機関への通報
【特定技能協議会】
・最初に、外国人材を受け入れた場合は、受入れ後4ヵ月以内に、農業特定技能協議会への加入が必要です。
・漁業特定技能協議会への加入は、水産庁ホームページ
(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/tokuteikyogikai.html)から行うことができます。
(出典)水産庁パンフレット「特定技能外国人材の受入れ制度について(漁業分野)」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/attach/pdf/tokuteiginou-8.pdf
7.まとめ
・特定技能「漁業」の創設により、人手不足が深刻化している農業分野において、
即戦力となる外国人が受け入れやすくなりました。
・日本語能力への不安、生活面の不安などから外国人を雇用に慎重になっている
事業者様も多いと思いますが、将来を見据えて、今のうちから特定技能外国人の
受け入れをご検討してみてはいかがでしょうか。
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提供しており、20,000人以上をサポートする外国人就労者支援サービスのリーディングカンパニーです。
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