ORJ Blogブログ

2021.12.14特定技能2号の解禁検討報道について

11月18日、政府・法務省・出入国在留管理庁が特定技能2号の対象業種拡大を検討しているとの報道がありました。

報道では、現在特定技能2号が認められていない12業種のうち、介護以外の11業種について検討し在留期間の上限がなく家族帯同が認められるとの事です。特定技能外国人が長期在留できるようになることは、担い手不足の産業においては朗報ですが、では特定技能2号とはそもそもどのような在留資格なのか?

今回はもう一度、この「特定技能2号」について情報を整理するとともに、なぜ介護が検討されていないのか?考えていきます。

外国人が日本で就労するためには在留資格が必要です。

日本の入管法の基本的な考えは、外国人を「移民」ではなく「労働者」として受け入れる方針であり、「優秀な外国人材(専門的知識や技術力を持つ外国人材で高度人材とも呼ばれる)」には在留を許可しています。現在国内で就労できる在留資格は19種あり、特定技能もこの中に含まれます。

介護が検討されない理由

この19種の在留資格の中で「介護」という在留資格があります。これは、2017年9月より新しく認められた在留資格で、介護福祉士の資格を取得し、介護士として勤務する事で取得できます。また在留期間は更新を繰り返すことで、実質上限なく日本で就労することが可能です。

特定技能2号とは、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人」とされており、この「熟練した技能」の証明を介護福祉士の資格取得をもって証明すると考えると、実質特定技能2号に準ずるものであることから、介護については特定技能2号を検討しない理由であると思われます。

介護は特定技能2号に相当する在留資格があるが、「その他の産業分野は特定技能2号に相当するような在留資格が現状無い」ので、新たに新設するという事です。

在留資格「特定技能」とは?

特定技能とは、深刻な人手不足の状況に対応するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れる制度です。

特定技能には特定技能1号と2号の2種類があり、特定技能1号は特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格。特定技能2号は特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。

特定技能1号と2号の違い

すでに特定技能2号が認められている業種

現在、14の特定産業分野のうち、建設、造船・舶用工業の2つのみ認められています。

特定技能2号になるためには?

2号特定技能外国人が従事する活動は、特定産業分野に属する業務であって、熟練した技能を要する業務でなければなりません。

この熟練した技能とは長年の実務経験等により身に付けた熟達した技能を言い、詳細については各分野の「分野別運用要領」で定められています。

特定技能2号は特定技能1号よりも高い技能水準を持つ者に対して付与される在留資格ですが、この技能水準を満たしているかどうか?は、特定技能2号評価試験等の合格によって判断される事となっており、特定技能1号を上限5年で満了したからといって、自動的に2号の在留資格が付与されるわけではありません。

また、2号評価試験の合格と合わせて一定の実務経験を求めているものもあります。

※例えば建設の2号特定特定技能外国人については、試験合格に加えて「建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理するもの(班長)としての実務経験も必要で、これは建設キャリアアップシステムの能力評価におけるレベル3(職長レベルの建設技能者)を有することを想定しています。よってテスト合格と合わせて、班長としての実務経験を有することの証明書類もしくは、建設キャリアアップシステムのレベル3カードの写しの提出が必要となっています。

建設キャリアアップシステムについては下記WEBサイトを参考にしてください。

建設キャリアアップシステム:https://www.ccus.jp/

特定技能2号評価試験とは?

残念ながら現状では2号評価試験は開示されていないため、どのような内容のものか不明です。ただし、技能検定1級の合格でも良いとされている職種もあり、試験内容はこの「技能検定の1級」程度の内容になるものと思われます。

見通しとしては、建設、造船・舶用工業ともに早ければ2022年度~23年度には2号評価試験についての情報が配信され、試験内容としては建設は実技・筆記に実務経験の証明。造船は実務経験は同様に必要となりますが、試験は実技試験のみとなる模様です。

技能検定とは?

技能検定は「働く人々の有する技能を一定の基準のより検定し、国として証明する国家検定制度」です。職業能力開発推進法に基づき実施されています。また、技能検定は厚生労働省が定めた実施計画に基づいて試験問題等は中央職業能力協会、試験の実施は各都道府県職業能力開発協会が行っています。技能実習生が受けている検定試験の上位試験となります。

中央職業能力協会:https://www.javada.or.jp/index.html

厚生労働省:技能検定制度について:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/ability_skill/ginoukentei/index.html

技能検定の等級区分

技能試験には、特級、1級及び単一特級、2級、3級のほか、外国人技能実習生が受験する随時2級、3級、基礎級があります。

技能検定の1級は「上級技能者が通常有すべき技能の程度」とされ、3級ですと「初級技能者」とされています。

受験資格

試験は実技試験及び学科試験が行われます。

詳細は厚生労働者HPにてご確認ください。

厚生労働省:技能検定職種及び等級区分

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/ability_skill/ginoukentei/syokusyu.html

建設分野の特定技能2号と技能検定の合格率について

現在2号が認められている建設分野について、業務内容と技能水準を満たしているかどうかの評価試験について、一覧表にまとめてみました。

技能検定1級の過去3年間の合格率もあわせて併記しています。技能検定1級は実務経験7年以上が受験資格で、この合格率は主に日本人が受験した結果の合格率です。

特定技能外国人(2号)が

従事する業務区分

技能水準及び評価方法等

過去3年間の合格率

平成30年

令和

元年

令和

2

型枠施工

型枠施工(複数の建設技能者を指導しながら,コンクリートを打ち込む型枠の製作,加工,組立て又は解体の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験 (型枠施工)

または技能検定1級 (型枠施工)

60

63

55

左官

左官(複数の建設技能者を指導しな がら,墨出し作業,各種下地に応じ た塗り作業(セメントモルタル,石膏プラスター,既調合モルタル,漆喰等)に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験 (左官)

または 技能検定1級(左官)

67

67

66

コンクリート

圧送

コンクリート圧送(複数の建設技能者を指導しながら,コンクリート等をコンクリートポンプを用いて構造物の所定の型枠内等に圧送・配分する作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号 評価試験

(コンクリート圧送)

または 技能検定1級

(コンクリート圧送施工)

69

71

66

トンネル推進工

トンネル推進工(複数の建設技能者 を指導しながら,地下等を掘削し管 きょを構築する作業に従事し,工程 を管理)

建設分野特定技能2号 評価試験

(トンネル推進工)

建設機械施工

建設機械施工(複数の建設技能者を指導しながら,建設機械を運転・操作し,押土・整地,積込み,掘削, 締固め等の作業に従事し,工程を管 理)

建設分野特定技能2号評価試験

(建設機械施工)

土木

土工(複数の建設技能者を指導しながら,掘削,埋め戻し,盛り土,コンクリートの打込み等の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(土工)

屋根ふき

屋根ふき(複数の建設技能者を指導しながら,下葺材の施工や瓦等の材料を用いて屋根をふく作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(屋根ふき)

または技能検定1級(かわらぶき)

65

65

65

電気通信

電気通信(複数の建設技能者を指導しながら,通信機器の設置,通信ケーブルの敷設等の電気通信工事の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(電気通信)

鉄骨施工

鉄筋施工(複数の建設技能者を指導しながら,鉄筋加工・組立ての作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(鉄筋施工)

または技能検定1級(鉄筋施工)

60

60

53

鉄筋継手

鉄筋継手(複数の建設技能者を指導しながら,鉄筋の溶接継手,圧接継手の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(鉄筋継手)

内装仕上げ

内装仕上げ(複数の建設技能者を指導しながら,プラスチック系床仕上げ工事,カーペット系床仕上げ工事,鋼製下地工事,ボード仕上げ工事,カーテン工事の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(内装仕上げ)

または 技能検定1級(内装仕上げ施工)

もしくは技能検定1級(表装)

69

68

66

表装

表装(複数の建設技能者を指導しながら,壁紙下地の調整,壁紙の張付け等の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(内装仕上げ)

または技能検定1級(内装仕上げ施工)

もしくは技能検定1級(表装)

54

55

70

とび

とび(複数の建設技能者を指導しながら,仮設の建築物,掘削,土止め及び地業,躯体工事の組立て又は解体等の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(とび)

または技能検定1級(とび)

66

65

62

建築大工

建築大工(複数の建設技能者を指導しながら,建築物の躯体、部品、部材等の製作、組立て、取り付け等の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(建築大工)

または技能検定1級(建築大工)

60

58

58

配管

配管(複数の建設技能者を指導しながら,配管加工・組立て等の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(建築配管)

または技能検定1級(配管)

53

57

54

建築板金

建築板金(複数の建設技能者を指導しながら,建築物の内装(内壁,天井等),外装(外壁,屋根,雨どい等)に係る金属製内外装材の加工・取り付け又はダクトの製作・取り付け等の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(建築板金)

または技能検定1級(建築板金(内外装板金作業・ダクト板金作業))

50

56

59

保温保冷

保温保冷(複数の建設技能者を指導しながら,冷暖房設備,冷凍冷蔵設備,動力設備又は燃料工業・化学工業等の各種設備の保温保冷工事作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(保温保冷)

または技能検定1級

(熱絶縁施工(保温保冷工事作))

54

54

65

吹付

ウレタン断熱

吹付ウレタン断熱(複数の建設技能者を指導しながら,吹付ウレタン断熱工事等作業及び関連工事作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験

(吹付ウレタン断熱)

または技能検定1級(熱絶縁施工( 吹付け硬質ウレタンフォーム断熱工事作業))

54

54

65

海洋

土木工

海洋土木工(複数の建設技能者を指導しながら,水際線域,水上で行うしゅんせつ及び構造物の製作・築造等の作業に従事し,工程を管理)

建設分野特定技能2号評価試験(海洋土木工)



※合格率の算出は厚生労働省公表の「技能検定実施状況」より算出:
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19883.html

まとめ

特定技能2号の対象業種拡大が実現すれば、優秀な技能を持った外国人の方々が、長期間日本で就労できるようになります。ただし、技能判断基準はそれなりに厳しいものになる可能性があります。

また、介護についても介護福祉士の資格取得(平成28年以降70%前後の合格率)が長期就労の条件となりますから、これからは「優秀な外国人を採用する」だけではなく、「しっかりと育成する」というスタンスが求められるでしょう。受け入れた企業は単なる労働力としてではなく、将来の戦力としてしっかりと育成することが、長期就労や定着につながるのではないでしょうか?

特定技能2号の職種拡大についても、引き続き新しい情報が入り次第更新していきます。

  • HOME
  • ORJ Blog
  • 特定技能2号の解禁検討報道について